恋愛工学について

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最近恋愛工学について議論があるようです。

2016年5月、東京大学の学生と大学院生らが、女子学生への強制わいせつ事件を起こし、逮捕された。2016年9月、慶應義塾大学の学生らが女子学生に強い酒を飲ませ集団性的暴行を行なったと週刊誌が報道した。大学は学生らに無期停学などの処分を行なった。2016年9月、千葉大学の学生らが女性に酒を飲ませて集団で性的暴行を行なったとして、集団強姦致傷容疑で逮捕された。立て続けに起きたこれらの事件は、大学関係者に大きな衝撃を与えている。

『週刊文春』2016年12月22日号は、千葉大学の学生である増田峰登被告についての記事を掲載している(「千葉大集団強姦主犯が私淑した外資系ナンパ師」(131~132頁))。その記事によれば、被告は、藤沢数希氏の提唱する「恋愛工学」にハマっていたという。「恋愛工学」とは、藤沢氏がメルマガや著書で提唱するナンパのテクニックのことであり、「メルマガの購読者数は五千人超」、著書は四万部を売り上げたとされる。現在の出版不況を考えれば、相当数の読者を獲得していると言える。『週刊文春』の記事では、「恋愛工学」の内容は「デートレイプに繋がりかねない」との批判が紹介されている(132頁)。もしほんとうにそのような内容だとすれば、「恋愛工学」に心酔した結果、被告は犯罪に及んだというわけなのだろうか。

「恋愛工学」はなぜ危険なのか

個人的な意見を簡潔に述べるのなら、恋愛を工学的に分析するのは面白い試みだと思います。恋愛工学の教祖の藤沢氏は外資系金融機関で働いているそうなので、名前の由来が金融工学であることは想像に難くありません。金融工学というのは、どちらかといえば文系の世界の金融というものに数理的なアプローチでなんとかしようというものです。

(この本の第1版をなぜか2冊持っています)

ですから本来の恋愛工学は恋とか愛という抽象的かつ形而上学的なふわふわしたものに科学的な解釈を与えるものであるべきだと思います。実際に藤沢氏の説明にはそうしたアプローチが見られるものもあります。

しかし残念なことにいわゆる恋愛工学はただのナンパテクニックとして認識されている面があります。信奉者の多くはただのナンパテクニックとして理解していて、件のブログエントリで批判されているとおり女性蔑視の視点を正当化するという誹りを免れないものだと思います。

今の状況ですと、恋愛に科学的な解釈を与えるという有用な意味があるにもかかわらず、恋愛工学=ゲスのナンパテクニックという不名誉なレッテルを貼られてしまいます。例えるなら、仕手株とか投資詐欺をしている人たちが金融工学の旗手だと言い張るようなものです。せっかくいい命名をしているのにもったいないことです。

願わくば誰かきちんと科学的に愛や恋に説明を与えられる人が影響力を持って情報発信してくれるといいなと思います。昔から多くの知の巨人たちがいろいろな知識を極めたけど女性のことだけは最後まで理解できなかった的な言葉を残していることからわかるように、恋愛というものは頭のいい人が恥ずかしがるのではなく真面目に探求してもなお手強い分野です。また困っている人もたくさんいるけれど、こと恋愛に関しては現代の教育システムはまったく役に立たず、中世のギルドさながらの師匠の技を見て盗め的な不親切さがあります。そういうものは教わるものではない、自然に体得するのだといったような。

随分前に恋愛家庭教師という企画を考えたことがあります。なんでもシンガポールでは学校教育の中に異性のことを理解するという科目があるんだとか。そういうふうに社会が進んでいけば、似非恋愛工学は駆逐されていくことでしょう。