日本経済を再生させるには 〜ニート的3本の矢〜

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友人から『トランプ大統領はひどいけど、安倍晋三首相率いる自民党も相当ひどいよ』のリンクが送られてきました。このブログまだ更新されていたんですね。一時期ニート系ブログは色々読んでいてここもその一つです。

在米の日本人としてはトランプ大統領の動向は気になるところですが、彼は不当に批難されているとも思っています。トランプやその支持者を罵ることは構わないが、トランプに罵られるのは許さないような人がメディア関係者を中心とした自称リベラルな人に結構いて、その偽善的な態度が私は嫌いなのです。別に彼はクーデターで政権を簒奪したわけではなくて、主として弱い人達の支持を得て当選したのですよ。

件のエントリの趣旨は安倍政権批判のはずが日本批判になっています。個人的には安倍総理は名宰相と言っていいと思います。ただ根本的に彼は経済のこととか景気のことには関心はないように見えます。彼自身がお坊ちゃんであり庶民感覚がない人です。アベノミクスも日銀総裁に頼りきりで、内閣の支援が得られず孤軍奮闘している日銀総裁が気の毒です。安倍総理が本当になんとかしたいのは憲法改正とかそれによる精神的な日本の絆みたいなものなのでしょう。ですから、そんなに彼には期待できない反面、総理大臣としては有能だと思っています。

安倍総理は3本の矢とか言っていますが、日本の経済を再生させるならもっとシンプルな解決策はあるはずです。以下個人の妄想(ニート的3本の矢)。

弱い産業の保護をなくす

日本は長らく護送船団方式に代表される弱い企業の保護を政府が行ってきました。収益力のある銀行は稼いではいけない、収益力のない銀行が潰れてしまうからという趣旨の制度です。みんなで仲良く貧しくなろうという社会主義的な発想です。護送船団方式自体はバブル崩壊とともになくなったことになっていますが、その考え方はいまでも根付いています。

ある架空の企業Xがあるとします。大学生の就職人気ランキングで毎年10位以内に入る有名大企業です。従業員は5万人います。従業員一人あたり平均3,000万円の黒字をあげたとしたら、5万人で1兆5,000億円の黒字が出ます。ところがこの会社は毎年数千億円規模の赤字を出しています。雑な計算をすれば、企業Xが競争力のある会社ならば1.5兆円の黒字になるところを、この会社を存続させていることで5000億円の赤字になっているので、この会社が存在することによる社会的逸失利益は2兆円になります。もし企業Xを解散して別の企業YとかZに移していけば2兆円の利益を生むことになります。

企業Xが赤字になるとメインバンクに支援を要請します。メインバンクは渋い顔をしながらも融資を継続します。このお金はどこから出るのかと言えば、巡り巡って言えば国民負担です。銀行の収益悪化すれば法人税も減るし、ATM手数料などが高くなるような形でも跳ね返ってくるかも知れません。

企業Xはさらに増資を行うかも知れません。公正な増資なら問題ないのですが、ここでは第三者割当増資とかMSCBを使った増資をするとします。話を単純にするために企業Xの株価が1000円、MSCBの行使価格が500円で、証券会社Aが引き受けます。証券会社Aはその話を聞いたらX社の株を大量に市場で空売りします。後にMSCBを株に転換することで株を返せるので強気で空売りします。1株500円ですから大儲けします。企業Xも現金が手に入ります。誰が損をするかと言えば一般の市場参加者です。

もしこの企業Xが自動車メーカーだったとしましょう。自動車というのはたくさんの子会社、孫会社、ひ孫、その下請けと強大な裾野産業を持ちます。新進気鋭の企業Zが自動車産業に参加しようとしても、この巨大な裾野産業を持っていないため参入障壁は高いのです。ですから企業Xは存続する限りは参入障壁を高く維持しようとするでしょう。老舗の自動車メーカーXは旧来のガソリン車やそれを発展させたハイブリッド車や水素自動車を得意としています。ガソリン自動車は時代の要請にしたがって今後減少していきますので、企業Xとしては水素自動車を次世代自動車の柱に据えたいと思っています。そのため政府に働きかけて次世代自動車はテスラのような構造の単純な電気自動車ではなく、企業Xが推進する複雑な仕組みの水素自動車であるということにしたいと思っています。政府はその働きかけをうけて国家として水素自動車を次世代自動車の柱に据えると決定します。水素自動車がもし本当にベストな選択であるのならいいのですが、もし単に企業Xの既得権を守りたいことが本音の効率の悪い自動車システムだとしたら、それを採用した国家にもマイナスの影響を与えます。前述の赤字以上に社会にとって悪影響です。

これらは一例ですが、弱い産業を無理に生かそうとすると非常に多くの見えない形での損が発生します。これが日本が20年以上ゼロ成長である理由だと思っています。

余談ですが、大企業は各種の税制優遇を受けています。日本の法人税率は諸外国に比べると高止まりしているらしいけれど、大企業が法人税減税にそれほど本気ではないのは、法人税減税をしても税制優遇が消えるならむしろ損だからです。法人税減税をして税制優遇をそのままにするのは政府的に無理です。大企業が税制優遇を各種受けているということは、そうではない企業や国民が負担していることになります。存続させることで多大なメリットのある企業ならともかく、単に古くからある大企業だからという理由で保護してはなりません。

解雇規制と就活をなくす

解雇規制は日本が不景気である根源とも言えるものですが、困ったことに解雇規制があることによって苦しんでいる人(自分が弱者だと思っている人)が解雇規制を支持しています。自分で自分の首を絞めているのですね。ですから、もし解雇規制をなくしますと言おうものなら小泉竹中改革どころではない批判の嵐にさらされることになります。それでも政権を維持する力が内閣に求められるのでこの改革は容易なことではありません。

現在派遣労働がかなり広がっています。しかし企業の側から見ると派遣は決して安くありません。正社員を雇ってもいいくらいのコストが発生します。一方で派遣で働いている側は給与は安いし身分は安定しないし、自分は非正規であるという劣等感もあるかも知れません。双方が不幸せになるシステムです。会社側はこれだけ払っているんだから、もっと働いてほしいと願っています。従業員はこんな安い賃金では頑張れないよと思っています。では誰が得しているかというと派遣会社が儲かっています。

ではなぜ双方損する派遣社員がこれだけ普及しているかと言えば解雇規制の存在です。直接雇用するとリスクが大きいので、そのリスクヘッジとして高いコストを払ってモチベーションの低い人を雇用しています。解雇規制を撤廃すればアメリカのように直接雇用のリスクが低下して正社員が増えるはずです。

解雇規制を撤廃して定着すれば、企業は自由に解雇できるようになり、必要なときには躊躇なく採用できるようになります。すると働く側にとっても次の仕事が見つかりやすい状況になります。そうするとブラック企業で働いている人はすぐ辞めるようになります。辞めても次の仕事がすぐに見つかるのだからブラック企業に餌をやる必要はありません。収益力が低くて低賃金で長時間労働者をこき使うブラック企業は人がいなくなって潰れます。解雇規制は弱い産業保護でもあるのです。

就活というのは就職活動全般のことではなく、現在日本で新卒の学生を中心に見られている習慣のことです。特定の時期に授業をサボってまで画一的な服装や髪型、メイクにして企業行脚をするあのスタイルです。なぜ就活があるかと言えば新卒時を逃すとよい企業に就職できる見込みがかなり下がるからです。人生を人質に取られて駆り立てられているのが就活です。人生を人質に取られていますから、他のほとんどの都合に優先して就活をしなければなりません。今の大学生は就活があるから留学すらためらう人がたくさんいます。留学先では日本の就活なんかに配慮しませんから、留学していると就活時期を逃したりするおそれがあるわけです。就活業者はその弱みに付け込み、また知識のなさに付け込んで商売をしています。毎年新しいビジネスマナーが生まれそれを知らないと新卒カードを無駄にするようなプレッシャーを掛けてきます。私は人に恐怖を与えることで最終的にお金を出させるのはヤクザだと思っていますので就活業界はヤクザのしのぎです。

新卒で大企業に入り定年まで勤め上げるのがベストという考え方の1つはこの就活によって植え付けられると考えています。

就活はまた企業側にも悪影響を与えます。優秀な学生の争奪戦が激しくなっていると吹聴して企業側の危機感を煽り、コンサルティング業務を請け負ったりしています。あまり実際の業務では役に立たない就活知識を大量に見に付けた就活エリートを採用させます。就活エリートで学業もエリートならいいのですが、就活において往々にして学業は軽視されます。企業は人で構成されていますが、その構成員である人を採用するプロセスを汚しています。

ですから人材の入り口である就活と、出口である解雇規制改革をすれば、ブラック企業や収益力の低い企業は消えていくでしょうし、現場にミスマッチな就活エリートを誤って採用して解雇規制があるからずっと雇い続けることもなくなり、結果的に日本の経済力が高まります。

セーフティネットを拡充する

解雇規制が撤廃されても、直ちに企業は人を積極的に雇うようにはならないでしょう。新卒の学生も就活をやめるまでしばらく時間を要するでしょう。そのあいだのつなぎとなる支援が必要になります。

個人的にはベーシックインカムがよいと思います。日本国籍を持っていれば無条件に月10万円払うようなものです。そうするとニートばかりになるとか財源はどうするんだという批判が出てきます。

ベーシックインカムがあっても基本的に国民全員がニートになることはないでしょう。なぜなら月10万円あれば死にはしないけど、それほど満ち足りた生活とは言えないからです。ベーシックインカムは生活保護と違って、働いたら失われるわけではありません。普通の人はベーシックインカム10万円に労働で20万円得て、月に30万円の生活を求めるでしょう。

ベーシックインカムがあると嫌々やっている仕事を辞める人が増えます。現状では今の仕事は嫌だ辛い楽しくないと思っていても生活のために仕事を続けなくてはなりませんが、ベーシックインカムが導入されると現在の仕事が嫌だと思っている人が仕事をやめるきっかけになります。すると人手不足になり、今まで無職だった人が代わりに仕事に就くようになるかも知れません。

創業期のスタートアップは収益を生まないことが普通です。ですから現状だとスタートアップをするには貯金を切り崩しながら頑張ることになりますが、ベーシックインカムが導入されるとスタートアップを始めやすくなります。そのうちいくつかは成功して収益力の高い会社になり、もしかするとGoogleやFacebookのような国を代表する会社にまで育つかも知れません。

ベーシックインカムは子供にも与えられますから、仕事を辞めると子育てできないという理由で子供を産まずに仕事を続ける人は減るでしょう。保育園問題も緩和します。

財源はどうする問題の何割かは上記の経済活性化による税収増で解決します。その他、ベーシックインカムは年金や生活保護を一元化してベーシックインカムにするため政府の費用が大幅に減ります。年金の計算には膨大な職員があたっているし、生活保護のケースワーカーなどもたくさん必要です。生活保護の場合は本来不要な人が不正に受給している一方で本当に必要な人が受け取れていない問題もあるようだし、それを厳格に審査するとさらに公務員が必要になります。ベーシックインカムにすればコストが大幅に減ります。年金や生活保護の財源がベーシックインカムの財源に転用可能です。

色々考慮すると、アメリカの国家規模でベーシックインカムを導入するのに必要な追加コストは差し引き1000億ドル(約11兆4000億円)以下だそうです。

例えば、アメリカに全ての住む大人に対し年間1万2000ドル(約140万円)、子どもに対して年間4000ドル(約45万円)のベーシックインカムを支給すると想定します。このとき必要な金額は、国民に対するベーシックインカムの総額である3兆ドル(約340兆円)になるわけではありません。ベーシックインカムを支給される人が年間45万円の税金を払っていれば、実質的に得るベーシックインカムは140万円マイナス45万円の95万円になります。支払っている税金が年間230万円ならベーシックインカムはマイナス90万円だといえます。このように計算していくと、340兆円規模のベーシックインカムを実施する場合、必要になるのはその30%の9000億ドル(約100兆円)ほどになると見られています。

上記の試算は、あくまでベーシックインカムをまったく新しい独立した制度として導入する場合のもので、現行の税額控除や保障の仕組みと組み合わせると、額は変化します。

アメリカに住む多くの高齢者は社会保障制度を通じてすでに「ベーシックインカム」のようなものを得ています。そこで、高齢者は社会保障制度とベーシックインカムのいずれかを選べるようになったり、ベーシックインカムを一部だけ適用するということも考えられます。そうすることで、高齢者が得られるお金を今より少なくすることなく、100兆円規模のベーシックインカムを25兆円規模にまで縮小可能です。一方で、現行の食物・栄養支援プログラム(1080億ドル/約12兆2552億円)、賃金補助金(720億ドル/約8兆1688億円)、子ども税額控除(560億ドル/6兆3535億円)、家族のための一時的な補助(170億ドル/約1兆9287億円)、住宅ローン利息控除(年間700億ドル/7兆9419億円)などをベーシックインカム制度と統合していくべきとのこと。

具体的にベーシックインカムをどうデザインするかで費用は異なりますが、上記のように考えていくとアメリカがベーシックインカムのために増やすべき税収入は1000億ドル(約11兆4000億円)以下になると見られています。

なぜ働かなくてもお金がもらえる「ベーシックインカム」を導入すべきなのか
Why we should all have a basic income

まとめ

弱い産業は資本主義のルールに則って退場する必要がありますが、弱い個人は政府が助ける必要があります。今の日本は弱い個人は放置されていますが、弱い産業は保護されているという真逆の形です。

日本の1990年から2015年までの25年間での経済成長はほぼ0%だそうです。一方でアメリカ、イギリス、隣の韓国さえもこの25年で3倍くらいには経済成長しています。この傾向は今後も続くと見られ、今のままでは日本は相対的にどんどん貧しくなることは確実です。それを解決するニート的3本の矢は極めてシンプルだと思いますが、一方で解雇規制撤廃は弱者いじめだとか、ベーシックインカムはニートが増えるとか非難轟々でおそらく国民的支持は得られないでしょうから、よほど卓越した指導力のある総理が誕生しない限りは日本経済再生はないかなと思っています。安倍総理はなかなか優秀ですが、彼の着想はどうもその辺にはなく、美しい国とか抽象的な理想論があるだけのように思います。

個人ベースでは日本に優れたリーダーが現れて果敢に改革を断行することを期待するよりは、アメリカとか勢いのある国に移住するほうが現実的かつ夢のある話ですね。トランプ大統領によってその移民の道が閉ざされないことを願っているとともに、日本に優れたリーダーが現れることもひっそり期待しております。

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