大学は不必要か?

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よくある議論ですが、大学は必要か?という話を見かけました。

その前に「必要」という語はほとんどの場合は「あったほうがいい」程度の意味で使われます。「酸素は人間の生存に必要か?」のような意味ではありません。さらには「自分にとってあったほうがいい」という話に終始していて、社会にとって有益かどうかは無視されている気がしました。

自分にとって大学はあったほうがいいか

私の場合は大学・大学院時代にアメリカに来るなんて考えたことはありませんでした。友人には小さい頃から海外旅行を普通にしている人もいたけど、うちは家族で海外旅行なんて経験はなく完全に国内に引きこもった思考をしていました。ですから以下に述べることはあとになって気づいたことです。なお現在では「学歴」は学校歴を指す場合が多いので区別して学位と書くことにします。

大卒でないとアメリカの就労ビザの申請は困難です。修士号を持っているとかなり有利になります。博士号があれば相当有利になります。ですから、日本にいるときは最初から博士課程なんて考えておらず、修士修了あたりで就職すると思っていましたが、今のコースを選ぶことが分かっているなら博士課程に進学しておくべきでした(へたれなので博士号が取れたかどうかはわからないけど)。私は大学院では完全な落ちこぼれというかやる気がなくなっていたので、学位なんか別に役に立たないし中退しちゃおうかと思ったくらいです。しかし、お情けででも学位を貰っておいてあとになって救われた気がします。ですから、自分の人生が安定しきっていて波瀾が起きることが全くないという確信があるのでなければ、可能な限り高い学位を取っておくほうがよいと思います。そのときは無価値だと思っても後になって持っていてよかった学士号ということになるかも知れません。

動画の中で出演者はネットがあれば論文でも何でも読めるといいますが、最終学歴が高卒で論文でも何でも読めて大卒以上の人と互角以上にやっていける才覚のある人はほとんどいないと思います。進学校の文化祭の部雑を見ると下手な卒論、もしかしたら修論よりよくできているじゃないかというものもありますが、それはほんの一部。その進学校の同学年の生徒の中でも1人か2人しかいません。高校までの実力で研究ができるなんてことは卒業生の半数以上がトップ大学に進学するような学校でも指折り数えるほどしかいない才能です。ホリエモンも茂木健一郎も有名な人だし、もしかして彼らは高卒で終わっていても頭角を現したのかも知れないけど、多くの人にとっては大学で勉強することは意味があります。学部レベルでもレポートの書き方くらいは指導され、あまりに稚拙な文章しか書けない場合は単位がやばいので努力することになります。大学院に行けば論文を読んだりする方法について凡人であっても覚えることになります。

全体的に誰にとって大学はあったほうがいいのかという話がきちんとなされていないと感じました。ホリエモンにとっては大学は不要であったとしても、質問した人にとっては有用かも知れません。

社会にとって大学はあったほうがいいのか

前述のように、ごく一部の秀才を除くと大学教育には意味があると思います。大学で指導される事項は大人にとって重要なものが多々あります。

極端な話ですが、日本にポルポトのような政治家が現れて、インテリは不要だ、労働者こそが真の国民であるみたいな過激なことを言って大学を全部叩きつぶしたとしましょうか。その場合に日本はどうなるかは正確には予想できませんが、カンボジアや文革を経た中国のその後の姿を見ればある程度想像はできます。おそらくかなり長期にわたって日本の国力は低迷し不幸な人がたくさん現れるでしょう。そこまで極端じゃないにせよ、ほとんどの高校生が大学で習ったことなんか社会に出たら意味ないよねと考えて大学進学率が非常に低くなったとしても同様に相当長期にわたって国力が低迷すると思います。

ですから、一般的な質問で大学に進学した方がいいですか?と聞かれたらその人がどんな人なのかわからないので、ごく平均的な人だと仮定して、卒業できるなら卒業しておいた方がいいとアドバイスすべきだと思います。自分が特に優秀だったからと言って「俺がいま高校生なら大学に行くという選択はしない」というような回答はよくないと思います。

しかしながら、日本の生産性は先進国の中で最低でアメリカの半分程度だという報告があります。毛沢東やポルポトほどぶっとんでいないにせよ、日本には社会に出たら学校で習ったことは役に立たないという思想が広くあるような気がします。ですから大学はレジャーランド化して、就活はカルト宗教みたいで、その結果入社した会社では非効率を長時間労働で補うような働き方をして何とか先進国に食らいついている状況です。このような状況では大学はあまり機能していないから、ごく一部の大学を除いて廃止にしてよいという議論があるのもしゃーないのかな。

個人的には廃止を議論するのは大学をではなく「就活」ではないかと思っています。リクルートを筆頭とする就活屋を規制するだけで10年か20年後にはだいぶ生産性は上がるのではないでしょうか。就活(没個性的なリクスーを着て貴重なお話ありがとうございましたとか言って回る一連のあれで就職活動全般とは区別される)が始まったのはバブル崩壊後らしいので20年くらいの歴史があります。会社員人生が40年あるとしたらその半分は就活に汚染されていますから、立ち直るまでには結構長い期間を要するかも知れませんね。