剣乃ゆきひろ(菅野ひろゆき)の思い出

広告

2017年1月24日修正、アダルト系記事と判定されたので全面的に書き直します。

この記事は2008年10月15日に最初に書かれました。当時、彼はまだ健在だったのですが、2011年12月19日に脳梗塞でお亡くなりになったそうです。惜しい才能をなくしました。また脳梗塞の原因はわかりませんが、例えば過労死の死因は脳梗塞である場合が多いそうです。もしかすると激務が祟ったのかと思うと残念なことです。

このエントリでは敬称略です。

剣乃ゆきひろ

私が彼のことを最初に知ったのは『EVE burst error』です。もともと、ドラクエで有名な堀井雄二の『ポートピア連続殺人事件』や『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』が好きで『軽井沢誘拐案内』もわざわざMSX版を手に入れてプレイしてみました。『軽井沢誘拐案内』はパッケージにヒント券がついていて、どうしても解けないときはその券を送るとヒントをくれるのですが、発売から相当経って送ったにもかかわらず詳細な攻略情報が送られてきて嬉しかった思い出があります。そんなわけで、18歳未満お断りのゲームであっても探偵もので評判がよかったEVEに手を出したのは必然と言えます。

これがとても面白くて、話の筋書きもそうだし、主人公二人も魅力的だし、またみんな評価していますがマルチサイトシステムも面白かったですね。ミステリー物を描くには実に適したシステムだと思います。二人の主人公がいて、例えば片方からはまっとうな人物に見える人が、もうひとりの主人公視点では怪しいことをしているような表現があります。プレーヤーは二人の主人公を操作しているので、その人物は危ないとわかっていても片方の主人公はそれを知りません。堀井雄二の三部作はほぼ主人公視点でしか物語を見ていない(軽井沢は途中で主人公交代がちょっとだけある)し、他にも神宮寺三郎シリーズなどもやりましたが、EVEのような表現は初めてでした。また剣乃ゆきひろ(当時)特有の、現代科学ではなし得ないものが背後にあり、ミステリーのようでありSFのようなストーリも素敵でした。

EVEは剣乃ゆきひろがシーズウェア(当時の開発会社)を離れたあとシリーズ化されますが、最初のburst errorを超えるものにはならなかったと思います。またburst errorも何度も何度もリメイクされて、最近もまたWindows用に発売されています。

EVEがとても面白かったので彼の他の作品にも手を出します。『悦楽の学園』はEVEの前作とされていますが、舞台背景が似ているだけで本質的なつながりはありません。EVEも開発中は『悦楽の学園2』のように言われていたらしいですが、一部の人物が共通で出ることや、女性側の主人公が学校に潜入するときの口実に『悦楽の学園』で使われた制度が出てくるくらいのものです。ゲームとしてはそれほど強く感銘を受けたわけではありません。

『DESIRE 背徳の螺旋』はEVEより前の作品ですが、主人公が二人いるマルチサイトシステムのようなものは既にあります。二人のシナリオを終えると第三のシナリオが始まり、その結末で明かされる事実は新鮮な驚きがありましたが、全体的にはEVEほどの満足感はありませんでした。18歳未満お断りのゲーム特有の表現が過激だったのを覚えています。

話が前後しますが、最近読んだ記事に剣乃ゆきひろ(菅野ひろゆき)のことが詳細に述べられています。

菅野さんは『DESIRE』の時期にすでに『EVE』と同じようなマルチサイトの構想があったんですが、『DESIRE』のマコト編をほとんどエロシーンに改変させられたわけです。それが悔しかったらしくて、『XENON』で『かまいたちの夜』的なマルチシナリオシステムを構築して、3つぐらいルートのシナリオを作り、その内ひとつがエロだったらいいだろうと。最後に社員として会社の方針に忠実に『エイミー』という純粋で明るいエロゲを作って、そこからフリーになって好きなものを作らせてくれ、として出来たのが『EVE』だったんです。そこでエロ絡みではないマルチサイトが初めて作れたわけです。

『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』音楽家・高見龍氏インタビュー 今明かされる『EVE burst error』『YU-NO』秘話

『DESIRE』のマコト編の表現がきついのは彼本人も不本意であったのですね。

そのあと剣乃ゆきひろはエルフに移籍します。エルフは当時はおそらく最大手の18禁ゲームメーカーで、有名作に『同級生』シリーズがあります。『同級生2』や『下級生』は結構好きなゲームです。また当時のPC-98では16色しか色を使えないので、ほとんどのゲームは絵に魅力がありませんでした。エルフは高い塗りの技術で16色であってもきれいな絵を売りにしていました。そこに剣乃ゆきひろが合流するので期待も高まります。エルフの社長の蛭田氏と交互にゲームを作っていこうと言っていたと雑誌かなにかで読んだので、以後はエルフから剣乃ゆきひろのゲームが出ると期待していました。そしてYU-NOが発売されました。

これは素晴らしかった。剣乃ゆきひろのシナリオやゲームシステムの魅力に加えてエルフの制作力が加わって最高のゲームができたと思いました。YU-NOもまた8ヶ月くらいの短い期間で作られていたらしいけれど、最初から最後まで徹頭徹尾よくできていたと思います。YU-NOはプレイした当時の思い出補正があるかも知れませんが、この手のゲームの金字塔であると信じています。WikipediaのYU-NOページが妙に記述が多いことを考えると根強い人気があることが伺えます。

ところが残念なことに、剣乃ゆきひろはエルフを去ります。エルフに加わったときは今後何作もゲームを出していくという話であったにもかかわらず、YU-NO一作だけでエルフを去ることになりました。何があったかは当時はわからず、社長と喧嘩でもしたのかと思っていました。ところが先程の記事で

菅野さんはelfでは孤立してましたね。理由は単純で、elfは蛭田さんのカリスマで集まってきたスタッフの人たちの会社だったから。当時、彼は『EVE』でフリーランスになっていたので、役員としてelfに入ったわけです。elfのスタッフからしたら、外からきた人間が突然役員になって命令してきたということで、トラブルがいろいろあったという話を梅本くんからも菅野さんからも聞いています。

『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』音楽家・高見龍氏インタビュー 今明かされる『EVE burst error』『YU-NO』秘話

と明かされています。

エルフでは過去のゲームをWindows版などに何度もリメイクをしています。当時のPC-98の16色のゲームがWindows版では256色やもっと多くの色を使うように魅力的にリメイクされていく中、何故かYU-NOだけはほぼ何もなされませんでした。

セガサターンにはYU-NOはリメイクされ、色数は多くキャラクターに声がつきました。担当の声優さんも18禁向けの声優さんではなく、人気の有名な方が多く携わってよい出来になりました。18歳未満お断りのシーンはそれとなく外されて、やや不自然な感じも残りましたが、もしかすると本家のPC-98版よりいい出来栄えかも知れません。

しかしその後は、Windows版にリメイクされることありませんでした。一応、大人の缶詰というパッケージにWindows版のYU-NOが入っているそうですが、PC-98のままの16色で、シナリオも伏せ字が多いなど評判はよくありません。

ともあれ、詳しい事情が分からない中、エルフと剣乃ゆきひろはケンカ別れになって、それゆえにYU-NOも冷遇されたのかなあとずっと思っていました。その後、さきほどの記事で

その時のelfさんの反応は、『YU-NO』の版権がelfにあるかどうか確認が取れないというものでした。いったい『YU-NO』の版権はどこにあるんだろう?

『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』音楽家・高見龍氏インタビュー 今明かされる『EVE burst error』『YU-NO』秘話

YU-NOの版権がどこにあるか不明だったことが原因であると語られています。でも本当にそうなのかはわかりません。剣乃ゆきひろがエルフで制作したのだから、どこかに版権を譲渡しない限りはエルフが版権を持っているはずなのだから。20年ほど経った今ならともかく当時の人はわかっていたと思います。

そのYU-NOのリメイクが出るようです。

PS4は持っていないのですが、これは買っておくべきかと悩んでいます。もうPC-98も処分してしまって、当時のハードディスクやゲームの箱もどこかに行ってしまいました。たぶん処分したと思います。サターン版ももうありません。とっておくべきだったのですが、いつの間にかに処分されていました。ですから、ミステリーゲームの金字塔としてどこかでアーカイブしておかないといけないかと思っています。

菅野ひろゆき

エルフを離れた剣乃ゆきひろは菅野ひろゆきの名前で独立します。なぜ剣乃ゆきひろではないのかと言えば、当時は剣乃ゆきひろはエルフの商標だから使えないという訳の分からない理屈を聞きました。そんな馬鹿なことってあるのだろうかと。でも最近でも能年玲奈が自身の名前を事務所におさえられているので使えず「のん」を名乗ることになったと言いますから、そういうこともあるのかも知れません。能年玲奈の場合は本名を使うなというから、剣乃よりもひどい話です。

独立後、彼はいくつかゲームを出します。『エクソダスギルティー』が最初だったと記憶していますが、これはもちろん買いました。なかなか菅野ひろゆきらしいキャラクターが3人主人公で、特に現代編はそう感じたかな、シナリオは魅力的に思いました。ただ、絵やゲーム全体の完成度はエルフ時代のYU-NOとくらべてだいぶ同人ゲームっぽくなったような気がして残念でした。シナリオももしかすると、もう少し完成度を高める余裕があったのかも知れません。

細かい事情は知りませんが、おそらく開発資金がそれほど潤沢ではなかったのだと思います。ですから、限られたスタッフと製作期間で発売して売上に繋げないといけない事情があったのではないでしょうか。ファンとしてはエルフでないにしても、十分な資金力のある会社に参加してもらって開発してもらえれば彼の才能も十分に発揮できただろうと残念に思っています。

それから『不確定世界の探偵紳士』が発売されます。これももちろん買いました。買ってパッケージを押入れに隠しておいたら、引越の手伝いの際に彼女さんに見つかってちょっと怒られた思い出があります。これは特にマルチサイトではなく、王道のミステリーでした。ミステリーのテーマは面白いものがあり、またメイドロイドというロボットのようなものが出てくるあたりは、ややSFが混じる彼らしいシナリオだったと思います。余談ですが、このメイドロイドは今後も色々な形で登場しますが、『不確定世界の探偵紳士』がオリジナルのメイドロイドっぽい感じなのに、後の作品では別のキャラがそうなのだというような展開もあるし、あと『不確定世界の探偵紳士』のメイドロイドは寝るときも横にならず、理由はオイルが漏れるから?だったか何かロボットっぽい理由がありました。また体重もいくつだっけ130kgと見た目は可愛い女の子なのに体重は重量級ですが、後のメイドロイドはほぼ人間と見分けがつかないものになっています。改良されたのかも知れませんが、別物かも知れません。『不確定世界の探偵紳士』の主人公は他の作品でも出てきますが、メイドロイドは出てきません。色々謎が深まりますね。

その後『ミステリート 〜不可逆世界の探偵紳士〜』が発売されます。これも『不確定世界の探偵紳士』の世界観の流れにありますが、雰囲気は明るくなりました。その後の作品群を見るとミステリートがある意味中核と言っていいのかも知れません。『不確定世界の探偵紳士』で戦っていた犯罪組織はどこ行ったのかとか気になるところですが、ミステリートにはミステリートの犯罪組織があります。犯罪組織同士のつながりは不明ですが、まるで別組織となるとミステリートが解決しても『不確定世界の探偵紳士』のほうが宙ぶらりんなので、なんとかして欲しいところです。

ミステリートを中核として脇を固める話がいくつかあります。『ミステリート 〜アザーサイド・オブ・チャーチ〜』はミステリートの隣町の話で、主人公たちはお互いに会うことはないのだけど、周囲の人物は共通で出てきます。テキストの一部をクリックすると分岐するシステムで、どこをクリックするか、せっかくだから全部シナリオを読みたいと思って正解じゃなさそうなところもクリックするとかやっていると膨大な時間のかかるゲームでした。ボリュームはかなりあります。最初はそのことに全然気づかず、何度やってもすぐに終わってしまうので、説明を読む必要がありました。ミステリートの敵対組織の話が出てきます。システムはミステリートとかなり違います。あとメイドロイドの話で驚きの事実も明らかになります。

『デュアル・エム ―空(から)の記憶―』はシステム的にはミステリートに近い探偵ものです。ミステリートで別の意味で立ちはだかりそうな探偵が出てきます。ミステリートの最後でちらっと見たときは実力があって銀髪で老人なのかと思ったら実は若くて武闘派であったなどびっくりする点が多々ありました。単純に嫌なやつでもなく「イギリス紳士の風上にもおけない」わけでもなく、ちゃんとした探偵であるような感じです。話はなかなか引き込まれる魅力がありました。

『十次元立方体 サイファー』はアイドラーなどの用語やミステリートの人物がちょっとだけ回想で出ますが、基本的に別物だと思います。インストール時にランダムで決まる仕掛けがあって、一人で黙々とプレイしているより、友達と一緒にプレイして経過を話し合うと面白いことになったのではないでしょうか。菅野ひろゆきのゲームは常にこうした新しいシステムを入れてくるところが魅力です。最後はぶっ飛んだ展開になるルートもあり、YU-NOっぽいなと感じました。

訃報

冒頭とかぶりますが、このエントリを書いたとき(2008年)は菅野ひろゆきまだ健在だったのですが、2011年12月19日に脳梗塞でお亡くなりになったそうです。惜しい才能をなくしました。また脳梗塞の原因はわかりませんが、例えば過労死の死因は脳梗塞である場合が多いそうです。もしかすると激務が祟ったのかと思うと残念なことです。

その一方で、YU-NOのリンクを書き換えたように彼の業績が再評価されてきたのか、YU-NOのリメイクがPS4向けに発売される見通しで、これは嬉しいですね。

また『ミステリートF 探偵たちのカーテンコール』も発売されるらしいということで気になっています。こちらは完結編にあたるものになりそうです。ミステリートは話の途中で終わっているような点があり続きが気になる展開でした。主人公の敵として立ちはだかりそうな人物が登場し、主人公の大切な人の行方がおぼろげに見えてきたあたりで終わっています。別に『ミステリート ~アザーサイド・オブ・チャーチ~』というミステリートの舞台の隣町で起きた事件を扱った作品や、『デュアル・エム-空の記憶』でミステリートで今後立ちはだかるであろう探偵の話など脇を固める話はいくつかあったのですが、本編の続編はいままで作られてきませんでした。アザーサイド・オブ・チャーチの主人公の正体や、ミステリートと共通するキャラの秘密など気になる点はたくさんありました。シナリオを書いたのが誰かははっきりしないのですが、おそらく菅野氏本人ではないかと思います。

YU-NOが最高傑作だと書いたのですが、ミステリートを中心とした話は広がりが結構あり、きちんと仕上げることができるとしたらYU-NOを超えてくると思います。その辺を楽しみに完結編を待とうと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)