『「自分のアタマで考えた結果」を愚行呼ばわりする愚言』←本当に自分で考えているか?

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dankogaiが『「自分のアタマで考えた結果」を愚行呼ばわりする愚言』というエントリを書いていた。すばる望遠鏡は1円の稼ぎもないけど素晴らしいというのは同意というか、前のエントリでエンジニアが稼げないのと会社が稼げないのはまた別ということを書いたつもり。で、

優秀な技術者を「一円も価値を生まないセクター」に幽閉する愚行 – Chikirinの日記

ソニーで働く人達は、新卒入社の段階では日本で最も優秀なエンジニアの卵だったはずです。その人達が一生懸命働いて8年間、一円の価値も生んでいないなんてびっくりです。

「自分のアタマで考えよう」なんて本を出している人が、これほど自分の頭で考えてないことを平然とblogにうpしていることに。
(中略)

こういう状況に、日本で最も優秀な人達を幽閉していることの罪は、余りに大きいと思うのです。なんで彼らがこんな「罰ゲーム」みたいな部門で、働き盛りの8年間もの期間を無為にすごさねばならないのでしょう?

幽閉?

誰が?誰を?

ソニーの中の人々もすばるの中の人々も誰かに強制されてそこにいるわけじゃないよね?

自分のアタマで考えた結果、そこを選んだんだよね?

本当に自分の頭で考えているのだろうか?

おいらはこれはyou had betterだと思っている。確か教科書には「〜した方がいい」とshouldみたいな訳語が書いてあったけど、おそらく「〜した方が身のためだ」と訳す方がよいだろう。had betterをshouldの感覚で訳す人にとっては「新卒で就職した方がいい」なのかも知れないけど、状況を理解している人にとっては「新卒で就職した方が身のためだ」であり「いい会社に首尾よく入れたら終身雇用のレールに乗った方が身のためだ」であること理解しているはずだ。

新卒主義、終身雇用制、転職市場の未成熟

ごく変わり者を除いて大学/大学院の学生で新卒時に就職活動をしないでギャップイヤーを取ってから就職しようとしている人はいない。よほど図抜けて能力が高ければまた別だけど、圧倒的多数の学生は《醜活》に駆り出されている。ここに自由意志はほぼないと思うんだ。以下ではごく少数の例外については扱わない。

まず日本は新卒主義なので新卒で就職しないとほぼまともな人生を歩むことは不可能になる。まだフリーターがポジティブな言葉だった頃に卒業後にフリーターを選ぶなどして正社員の職に就かなかった人の末路を見れば明らかである。あいつらは無能だったけど、俺らは職歴なし既卒になっても大丈夫だろうなんて言える人はいないだろう。だから何が何でも新卒でどこかの会社の正社員に潜り込むことを考える。そのためなら大学3年の頃からインターンに行ったり努力をして内定を得られるまで4年の冬になってもひたすら頑張る。ダメだったら就職留年をするとか、あるいは大学院や専門学校に進学するとかして学生の肩書きは何としてでも残す。

首尾よくいい会社に入れたとしても転職するのはほとんどの人にとって損だ。多くの先達がコミッション欲しさに甘言を弄する転職エージェントに騙されて転職して前の会社より待遇が悪くなっているのを知っているからだ。一部の例外を除くと新卒時に入れる会社が最良の会社であって、その後に転職で移る会社は最初の会社より色々な点で劣っている。だから終身雇用のレールに乗っかれるのであれば乗っかった方がいい。

で、dankogaiのソニーの話に戻るけど「ソニーの中の人々もすばるの中の人々も誰かに強制されてそこにいるわけじゃないよね?」というけど、確かに強制はされていない。雇用期間の定めのない社員ならばいつでも退職できる。では自由かというとそうではない。ソニーほどの会社ならすぐに倒産することもないだろうし、待遇もかなり高い方だから仕事に魅力がなくても辞めない方が得である。独身ならまだいいけど、結婚して子供でもいると冒険するのはますます困難になる。失敗したときにひどい目に遭うのは自分だけでなく大切な家族も巻き込むからである。単に損得勘定で動いているのなら強制されていないと言えるけど、実際のところは自分や家族の人生を人質に取られているような感じ。

「自分のアタマで考えた結果、そこを選んだんだよね?」も違う。卒業後フリーターになってにっちもさっちもいかなくなった先達とか転職エージェントに「あなたの能力なら大企業の歯車よりこちらの会社で実力を活かしたほうがいいですよ」とか甘言に乗せられてひどい目に遭った人とか、数多くの見せしめを見せられた上で「あなたは自分で考えて自分の将来を決めることができます」と言われているに過ぎない。言うなれば、マフィアに何人か捕らえられて最初の一人は楯突いて殺されたのを見せられている状態で「好きにしていいよ」と言われたら自分の頭で考えて行動できる?

パンがなければお菓子を食べればいいじゃない?

dankogaiはある種のスーパーマンである。Wikipediaによると

中学へ入学するが学校教育に疑問を感じ、登校拒否を起こす。中学卒業後すぐに16歳で大検取得し、17歳でカリフォルニア大学バークレー校に入学する。日本では大検の効力が発生するのが18歳のため、留学するまでは家庭教師や塾講師として年上の生徒を教えていた。

大学4年の時に実家が全焼、学校を休学する[13]。大学で学んだコンピュータで生計を立て、29歳の時オン・ザ・エッヂの堀江貴文元社長にヘッドハンティングされる。

とある。英語も流暢だし技術力もある。また行動力もあるし、何かの既製の価値観に縛られて《醜活》するようなタイプではない。だから、仮に彼がソニーに入ったとしても自分にとって無価値ならばすぐに辞めることができるだろう。次の仕事には全く困らないだろうから。彼のような人ならば自分の頭で考えて行動できるし、だから彼のような人がソニーに残っているとしたらそれは自分の意志で残っていることに他ならない。

でもこういうスーパーマンの意見ってマリー・アントワネットの「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない?」に通じるところがある。「ソニーが嫌なら辞めてGoogleでも行けばいいじゃない」とか「日本企業が嫌なら海外で就職すればいいじゃない」とかまあそんな感じ。何も間違ったことは言っていないけど、ほとんどの人には実現不可能であるからそんなことを言われても途方に暮れるか激怒するだけである。激怒して革命でも起こせばまだいいのだけど、完全に牙を抜かれているからね。就活くたばれデモでも首謀者の写真はあちこちに回覧され厄介者としてマークされていると言うし、目立ったことをすると社会から締め出される。だったら出ていけばいい、と言えるほど能力と甲斐性があればいいのだけど、普通の人にそれを求めるのは無理なことだ。

dankogaiのようなスーパーマンではないごく普通の人、ソニーに入るくらいの人が自分の意志で会社を選べるようになるにはアメリカのように転職市場が流動的であるとか、あるいは新卒で何が何でも就職しなければならない風潮がないとか、終身雇用にしがみつく方が得であるという制度をたたき壊すとかしないと無理だろう。結局外部環境が変わるのを待つしかないが、その間にも毎年学校を出る人がいて地獄を見る。10年後に改善されるとしてそれまでの10年間に卒業しちゃった人の人生はどうすればいいの?10年で変わればいいいけどバブル崩壊って確か1991年くらいで20年変わっていないものがあと何年で変わるだろう?もっと前には新卒制度もなかったらしく、おっさんの中には大卒後に海外をぶらぶらして飽きたから有名企業に就職なんて人もいたし、永遠に変わらないわけでもないだろうけど、いつになるかは見通しが立たない。あの頃は人間が貴重だったから少しくらい経歴が変でも採用しただけかも知れないし。

ともあれ、並外れて能力がある人は《醜活》のようなルールに従うことは無意味だと思っていることが多い。ただ、彼らの根拠は何があっても人並み以上の稼ぎは得られるという自信から来ている。

正攻法以外の道も考えてみよう

大学入試に推薦やAO入試があるように、バカ正直に正面から入学試験を受けなくても大学に入ることはできる。これらの抜け道をうまく使うと数学が全くできないのに一流大学に入ることができる。これは合法だから使った方がいいけどあまりやっている人はいない。

ホリエモンが時間外取引で株を取得したとか株の100分割だとかでグレーだとかずいぶん騒がれた。結局彼は逮捕されてしまうわけだが、腐った司法でも彼は確か風説の流布と粉飾決算でしか立件することができなかった。

http://smoothfoxxx.livedoor.biz/archives/51993917.html

証拠主義とは名ばかりで、実際の判決は、裁判官の「心証」、つまり言動から受ける印象で決まることは多く、反省しているとみなされれば罪は軽くなり、よって反省の意を示す言葉が重要となるなど、恣意的で曖昧な運用が日本の司法の実態である。

のように、ホリエモンも裁判では涙を流して私が悪かった、全部認めますとか言って土下座でもすれば執行猶予が付いたかも知れない。

少し変わった業界だが日本屈指の大企業がある。採用試験を受ける際に大学に来ている説明会の担当者をとっ捕まえてまめに連絡を取って会社訪問なんかも事前にして部署の多くの人とコネを作って、そこからねじ込んで優良企業に内定を得た人がいる。彼の採用は現場からの強い希望によって決まったらしいので、他にバカ正直に選考を受けている人からすればずるいのであろうが、彼は何もルール違反はしていない。単に他の人が使わない近道を使っただけである。

ある外資系投資銀行の選考を受けて不採用になった人が世界各国のその会社のオフィスを周り、結局採用されなかったものの、最後に学生でありながら中途採用で選考を受けて採用された人がいる。学生だし職歴もないから新卒窓口からしか受けないと決めつけるのではなく、あらゆる窓口を叩いて回ることによって成功を得る場合もある。

職歴がないから採用されない人が職歴を捏造して採用試験を受けて採用された話がある。よく詐欺罪だとか私文書偽造だとか言っている人がいるけど、詐欺罪の構成要件には該当しないし、私文書偽造も「行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者」なので署名を偽造するとまずいが職歴の偽造は刑法的には罪にならない。まあバレたらクビかも知れないけど、最悪クビであって、上手く行けば採用されるかも知れないから実行して成功を収めたらしい。なお、そいつは途中でバレてクビになっても今度は数年の職歴があるからそれで転職すると言っている。

おいらは犯罪行為はお勧めしないけど、AO入試のように合法的に近道があるならどんどんやるべきで、疲弊して最悪自殺したりするほど《醜活》にどっぷり漬かるのは日本の悪習だと思う。とはいえ

マクロを組んで仕事をしていたら、先輩に「ズルしてる」と怒られた…OKWaveの投稿が話題に

マクロとは、表計算ソフトなどの操作手順を自動化したプログラムのこと。Excelなどを使う際にこれを組んでおくと、単純な繰り返し作業をすぐに終わらせられたりします。質問したユーザーも、このマクロを用いて手早く事務処理作業を終えていたようですが、そこで職場の先輩から言われたのは、「仕事が早いというのは同じ環境でどれだけ間違いがなく効率よく作業ができるか」や「マクロを組むのはズルをしているのと同じ」などの言葉だったとのこと。

日本にはこういう人もいるらしいし、頭コチコチに凝り固まって非効率な方法に突撃して無駄に長時間労働をしてひいては会社の業績を押し下げるとか、他人の足を引っ張るとか、そういう人が周りにいると自分の頭で考えて行動するのは難しいだろう。どうしてこういう考えの人を生んでしまうのか不思議で仕方がないけど、杓子定規な人なら山ほど見てきたし実際にいても不思議に思わない。この手のバカって小学校低学年の頃から周りにいたから病巣は深い。実話だけど、小学校の遠足で水筒の中身は水とかお茶でジュースは禁止とあった。そこに砂糖入りミルクティを入れて持ってきた人がいて、それを見た周りの糞ガキが騒ぎ出した。こいつは悪い奴だと。で、教師に報告したところ教師までもがそれはルール違反だから捨てなさいと命じた。つまりジュースは果汁飲料という意味ではなく甘いもの全般を指すわけだが、ミルクティはお茶ではないのか?こういうバカが教員をやっているから子供の頃からバカに育てられるのだと思うし、同時に少しでも周りと違うことをする子供は徹底的に叩きつぶされるわけだ。

社畜は単に自分が非効率な労働をして苦労するだけの人は指さない(らしい)。他人に対してまで不毛なサビ残とか非効率な方法を強要するようになってこそ社畜なわけだけど、社畜だらけの日本にいる間は自分の頭で考える人は迫害されるから生きづらいのかも知れない。

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