伽藍とバザール

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まずはコメントのお返事をします。

POSTED BY あ ON 2010年6月23日
日本の自動車産業に未来が無いってのは?だと思います。まぁメーカーによってはジリ貧のところもありますが…
実際、大学の教授(高齢です)と話した際にその人が、
「外国車の輸入自由化の際に、日本の自動車会社は潰されて(もしくは子会社化されて)終わると思っていた」
といってましたが、実際はBIG3の牙城を崩す所まで来ました。良く頑張っている方ではないでしょうか?
もちろん新興国の台頭で苦境に立たされるかもしれませんが、案外日本にとって自動車産業は、国技かもしれません。
韓国はそのあたり、家電を国技にしていくと思います。
日本の問題は、自動車産業に関わっている人間が多過ぎる点、あとは産業構造を簡単に変えられなくなった点だと思います。
昔は炭鉱採掘や紡績が大きな産業でしたが、時代と主に労働人口が他へ移って行きました。
今は昔と同じような事が出来なくて、もがいているんだと思います。

自動車という乗り物がなくなることはないのでしょうが、日本車の役割はドイツ車のような高付加価値車が中心になるはずです。さもなくば、不当に安い賃金で労働者を搾取するか、海外に工場をどんどん出していくことになります。あるいは高度に生産が機械化して人間が働かずに生産だけできるとか。

日本の自動車産業はBIG3の未来と同じで、完全に消滅するとは思わないけど、存在感は小さくなると考えています。アメリカはそれに替わる強い産業があるからいいけど、日本は今のところないのが問題です。代替がない理由の1つは他の産業がダメであることもあるけど、日本全体が自動車産業に傾斜しすぎているのもあります。

他の産業に移れないのは確かにその通りで、1つにはベンチャーを起業するのが非常に難しいことがあると思います。日本のベンチャーは小学校の児童会みたいなもので、政治ごっこをしているなら教員もニコニコして応援してくれますが、教員に対して本気で主張するようになったら潰されます。だいぶ前の話だけど、職員室でタバコを吸わないでとかいう決議を児童総会で出して、その要望を伝えたら潰されたとかいう話を聞きました。他にも生徒が遅刻するとうるさいけど、先生も遅刻してくるよとか、遅刻してきて授業を延長するのは止めてほしいとか、正論を言っても生意気だと潰された事例は多数あります。

だから、新しい強力な産業を作るには事実上は既存の大企業が主導しないと難しいように見えます。しかし、大企業は既存産業に傾斜しているしリスクを負いたくないからなかなか動かない。

伽藍とバザール

ある日記に

http://www11.ocn.ne.jp/~ques/diary/diary.html
[2010.6.20]  新成長戦略。
 官僚の作文以下の出来である。

とあった。全体的にあれなんだけど(おいらも人のことは言えないけど)断定の表現が強い割には思い込みが多い。あとあまり作文技術は上手くないな。

 経済を活性化させるのに重要なのは、ポンプ役の働きにある。資本主義経済が計画経済や共産主義に勝ったのは、国内においてお金を回転させる役割を、企業が担った為である。
 企業にお金を稼がせて、稼がせた分だけ使わせる事で、国内の経済は回るのである。
 国家が税金を取って、それを国民にばら撒いて使ってくださいというのでは、誰も富を生産しない。自給自足が可能な国家や税金という制度が必要無い地下資源国でなければ、経済は回らないのである。企業という存在は、資本主義経済の根幹である。
 資本主義国家において、貨幣を循環させるポンプ役は企業であり、企業に稼がせた分だけ使わせなければ、どんなことをやっても、お金は回らない。お金を回す為に企業という存在を許容するのが、資本主義の本質である。

というのは多くの日本人にありがちな反共思想かなあと思った。

計画経済に勝ったというけど、もうすぐGDPで中国に抜かれるのは確実だし、一人あたりGDPは低いと言っても日に日に中国の存在感は増してきている。ほとんどの国において中国は日本よりずっと話題に上る。

資本主義は資本家が生産手段を提供することで、社会主義では社会が生産手段を提供することに対するアイディアなのだけど、これはどっちが優れているというものではないと思っている。今では古典になった

というエリック・レイモンドによって書かれたオープンソースのソフトウェア開発に関する論文がある。要約すると、Linuxなどが成功する以前に主流だった企業内部でソフトウェアを生産し、そのソースコードなどの機密情報を管理する方式を宗教的な秘術の香りがすることから伽藍方式と呼んだ。それに対してオープンソースの開発方式を、大勢の人が集まってわいわいやることからバザール方式と名付けた。

少し前も原口総務大臣が政党のありかたを考えるのに

http://twitter.com/kharaguchi/status/9892433084
私が目指す「リナックス型」の理想の政党。これまでのピラミッド型の依存と分配の政治の対極。全ての人が平等で自由に出入りできる。オープン・ソースで情報や利益を囲いこまない。自立と創造、協働のネットワーク型政党を目指したいと思います。ツィッターのコミュニケーション形態に似ているかも。

とか

http://twitter.com/kharaguchi/status/9895146131
「リナックス型」システムは閉じたシステムよりもはるかに強い。誰かが特権を盾に利益を独占しようとしても、それを無力化することができます。民主党は、そのような政治のOSを目指して私たちが立ち上げた若い政党です。政治に巣食う旧来型・55年体制の残滓を払拭できるか。勝負の分かれ目です。

と述べた。本当にオープンソース政治になれたのかという突っ込みはともかく、彼の勘違いしている(と思う)ところはオープンソースがクローズドソース方式より優れているとしている点にある。伽藍方式とバザール方式は対立するアイディアだけど、これは開発手法の違いであってどちらが優れているとかそういう結論だと記憶している。

そもそもオープンソースで真に成功しているプロジェクトは非常に少ない。LinuxとかApacheとか指折り数えるほどである。さらにこれらのプロジェクトには実はリーダーがいる。船頭多くして船山に上るというけど、本当に好き勝手にやらせていたら上手くはいかないので、Linusのような優しい独裁者がバザール方式では重要な役割を果たす。自由なコミュニティでは参加メンバーのやる気を削ぐことなく、プロジェクトの目標を分散させないハイレベルな独裁者が必要である。給料を払うなら給料分働けオラでいいのかも知れないのでむしろより高度な組織運営が必要になる。

一方で、ここのところ連日、iPhoneとかiPadの話題が出ているけれど、これらは両方ともクローズドソースの製品である。成功のポイントはおそらくスティーブ・ジョブスのような強力なリーダーの存在がいたことだろう。成功しているプロジェクトは圧倒的にクローズドソースが多い。Windowsもそう。あとオープンソースになっているけど、あまり自由に出入りしていないもの(高度なマネジメントをしなくてもよい)もある。これはソースを閲覧できるというだけで、開発手法的にはクローズドソースに分類した方がいい。

最初の話題に戻るけど、変な市場原理主義というか企業まんせーな人が資本主義を語って政治がリーダーシップを執ることを否定しているのは典型的なバザール方式の失敗例だなあと思う。今の日本経済のダメダメなところって、民間企業に優しい独裁者たりえる優秀なリーダーがいないことに起因する。リーダーシップを執るというのは非常に高い能力と覚悟が求められるので、おそらくちょっと待った程度ではそんな人は出てこないんじゃないかな。

中国はある意味では積極的に資本主義的なシステムを取り入れているし、他に勢いのある国といえばシンガポールが思いつくけど、シンガポールも実は一党独裁の明るい北朝鮮でしかない。というわけで、最近の情勢を見ていると企業に任せておけばOKとか、政治がしっかりすればOKという単純なものではなく、強力で悪意のないリーダー群がいる国は強いということなんだろうと思う。

そうそう、NHK教育で6月24日の23:30〜23:55の時間帯に放映される「IT ホワイトボックス II」という番組でリーナス・トーバルズのインタビューが放映されるそうです。