会社は株主のものであることについて

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まずはコメントのお返事をします。

POSTED BY えぬ ON 2010年4月21日
ブログ主さんは台湾以前に、どこかへ留学されてたのですか?場所や期間など詳しく知りたいです。

ネット上なので詳細は避けますが、Ivy Leagueに8週間ほどいたことがあります。学位取得のためのものではないので、いわゆる留学ではないのですが、短期留学という言葉もあることだし、留学と言っています。

あとは学校には通っていないけど、1ヶ月くらいずつ色々なところに住んだことがあります。イスタンブルでは家に泊めてくれたので食費も宿泊費もかからずに済みました。次はメキシコに行きたいなあ。

営利企業のあり方について

Twitterでちょっと話題が出たので触れてみる。

企業は株主が第一だと思っていたのですが、どうなんでしょう?

これは別に間違っていないのだけど、解釈がおかしい人はたくさんいると思う。

株式というのは株主権を行使するための証書である。だから株主は持ち株数に比例した株主権を持っている。ところが日本の企業はどういうわけか株主が経営に口出しするのを好まない。何か株主総会で要求があると乗っ取りだとか騒いで過剰反応をする。だから、実質的に日本では株主権は行使できず、必然的に株主は短期的に値上がりした、値下がりしたということに関心を持つ短期筋か、あるいは会社公認の大株主による持ち合いになってくる。

黎明期の株式会社は大航海時代の例えばインドに行って帰ってきたら解散というシステムだったそうだ。インドに行けば香辛料が安く買えて大儲けできる。しかしスエズ運河もないし、嵐や海賊に襲われてリターンがゼロになる可能性もある。そんな危険なことに全財産はかけられない。そこに、有限責任の(会社が潰れても株価が0になる以上の損失がない)仕組みを作った。今の日本の通貨で言うと100万円を払って、失敗すると全部吹き飛ぶが、上手く行けば300万円返ってくる投資と考えるとよい。自分の余裕資金の範囲で船をインドに派遣できるようになった。

それから株式会社は色々と変わっていって、今の株式会社はゴーイングコンサーンといって理想的には未来永劫続いていくことを前提としている。一時的に儲かればそれでいいやという考え方は改めた。株主もできることなら長期株主であってほしいとされている。短期筋は「会社を解散して財産を全部処分して分配しましょう」みたいな提案だって厭わないからだ。

株を長期保有して嬉しい会社というのは、株価が急騰して急落するようなマネーゲーム銘柄ではなく、長期にわたってじわじわと株価が上がっていくような、投資家で言えばウォーレン・バフェットが好むような会社であるべきだ。

株価が長期にわたって上昇していく会社というのはどういう会社かというと、社会に必要とされている会社だと考える。自分の利益ばかり求めて「営利企業ですから」と開き直る会社はそう長続きしないと思うよ。例えば、食品添加物を多用しない食品が支持を得ている。これは割高になるので「会社は営利のためにあり、株主に還元せねば」と思考停止をしているのなら、低コストで作れる商品を並べるべきだ。しかし、実際には割高な製品は社会からの支持を受けて、それによって利益が得られている。

アメリカは消費者団体もなかなか過激で、企業の社会的責任をきちんと果たしていない企業には、これ犯罪だろうというほど過激なネガキャンを張ったりするので、アメリカのまともな企業は社会的な責任を意識していると考えてよい。そのことが長期的に株主の利益になると考えているからだ。

ところが、日本ではいわゆる日本的経営が見直されると表面的にアメリカ的経営を真似した結果、営利企業とか企業は株主のものという言葉を、意味を理解しないで使うようになった。役員報酬を米系ほどではないにせよ上げている企業も増えてきた。仏作って魂を入れなかった結果がこれである。

日本郵政グループの例

日本郵政グループが民営化して今年は人気殺到しているらしい。その面接で、民営化したのだから利潤を追求していかなければならないという意見を口にする学生が多かったそうだ。

なぜこのような意見になるのか考えてみると、世間にはなんちゃって経済学者がたくさんいて、バカなことを吹聴しているからではないかと思う。学生は業界研究と称してそうしたなんちゃって専門家の意見を自分の意見であるかのように口にする。やたらとソリューションがどうのこうの、ユニバーサルサービスが云々、ロジスティックス業務が・・・という人は危険だと思う。他人の言葉を借りてきて自分の考えであるかのように錯覚している。ちゃんと理解していればいいのだけど、セミナーとか新聞、経済番組で聞いたことをそのまま言う人が多すぎる。

さて、よくあるなんちゃって専門家がよく口にするのは、株式会社は株主のものであるから、会社は利益を追求して株主に還元しなければならないという。ここまでは間違っているとは言えないのだけど、その次に例えば「郵政は民営化したのだから、利幅の大きい金融商品を取り扱って営業していくことが大事」と言い出すとちょっと待てよという気になってくる。こいつら、そのうち過疎地の郵便局は廃止しましょうとか言い出すんじゃないかと不安になる。

日本郵政グループの果たすべき責任というのは、郵便がきちんと届くとか、過疎地でも一応郵便ネットワークを維持しつづけてきたこと(ユニバーサルサービスって言うの?)による信頼性を維持しつづけることだと思う。

とは言っても、ネットが出てきて要件はメールで済ませるばかりか、最近は映画とかソフトウェアとかもネットで配信されるようになり、物質を輸送することの重要性が下がってきている。だから、日本郵政グループの収益は今後はどんどん下がっていき、やがてユニバーサルサービスの維持が困難になってくるだろう。

というわけで、日本郵政グループが今後果たすべき責任というのは、既存のサービス・信頼を維持・拡張していくことで、維持するために新しいビジネスにも積極的に参入していくことである(と思う)。ところが、勘違いした専門家とか学生は、新しいビジネスで金儲けすることが大事だと思っている。何のために金を儲けるのかというと営利企業だからとか、株主がとか言う。今のところは法的にサービスの供給が義務づけられているけど、規制が外れたら何をしでかすかわからないようなのが大量に郵政を受けているという恐怖。

最終的にそういう勘違いくんたちを排除してくれればいいのだけど、郵政公社時代とは違って今は普通の採用をしているようだから、元気にはきはき喋る人なら入れちゃうのかも知れない。

会社は社会のために存在している

営利企業と言っても社会の一員であるのだから、社会に貢献すべきだと思う。日本では「社会人」とか「社会に出ると」とか訳のわからない言葉を使う人が多いけど、組織でも被雇用者(サラリーマンとか公務員)でも自営業者でも学生でも社会の構成員であることには変わりがない。けれども、サラリーマンなどだけが社会人であって、責任ある立場なんだよ(だからサービス残業しようね、電車が止まっても万策を駆使して出社しようね、病気でも働こうね、プライベートより仕事を優先しようね、有給休暇は使わないようにしようね、病休なんてダメだよ、他の人に迷惑かけちゃいけないよね)みたいに思われている。学生や組織にだって責任はあるし、規則を破れば「社会人」でなくても罰を受ける。罰を受けなくても非道徳的なことはしてはいけない。

営利企業は社会にとって有益な事業を営むことで、その対価を頂戴するくらいに考えた方がいい。猫も杓子も金儲けという金の亡者みたいな国は居心地が悪い。というか、既に居心地が悪いけどね。日本人の個人個人は「嫌儲」の人が多いというか、お金の話をすると急に浅ましいと思われるのに、組織だと金に汚いのだろうか。リフォーム詐欺をもう少し洗練させたような、要らないものを無理矢理売りつける商売をしている会社もたくさんある。

個人としては金の話を嫌うのに、組織になるとそうでなくなるのは、赤信号をみんなで渡れば怖くないという集団心理なのか何なのか知らないけど、前のエントリで書いた「ハーバード白熱教室」のような「正義」とは何だろうということを深く考えさせる教育を日本は指導者層(政治家とか官僚とか会社の重役に将来なっていくであろう人)にしてこなかったのが問題だろう。

もちろん(前にも書いたけど)アメリカ的な正義脳はときどき暴発して正義の戦争をやらかして危険でもある。頭の悪い正義脳は民主党政権みたいに独法が悪いんでしょ、脱官僚すれば日本はよくなる、あいつが悪いからやっつけろ的になっていく懸念もある。

例えばまともな行政大学院では状況の分析方法からネゴシエーション術まで色々な実践的な訓練をするそうだが、正義(と自分で思っていること)だけでは動かないときにはこう言うことも大事。でも、正義がない人がこういう手練手管で煙に巻くのも困る。両方とも大事だ。

2 件のコメント

  • とある会社の大株主としてのオレの実感。
    ●日本の企業はどういうわけか株主が経営に口出しするのを好まない。
    日本の企業の99%以上はオーナー企業であり、オーナーの思いのままに経営されているとおもた
    つまり、オーナーが絶対的な権力を持っていて、少数株主は何も文句を言えない。
    ●株主は持ち株数に比例した株主権を持っている。
    持ち株数に比例しないとおもた。株式のシェアが3分の2以上あれば会社経営に必要な全ての権利を有することなる。
    例えば、51%と49%だと、権利は51:49かといえばそうじゃなくて、100名の取締役がいる会社があるとすれば51%持っている株主が100名の取締役を全部決めれる。49%の株主は意見は言えるが、決定権はない。

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