スパコン、世界一になる必要あるのか

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しばらくの海外放浪から帰国して、今度は台湾の友達の妹(台湾大学の才媛です)が来るというから5日間ほど東京案内をしてきました。今朝、朝5時に家を出て、6時半にホテルで彼女を拾って成田空港まで送迎をして、さきほど帰宅しました。疲れた、昼寝をしよう。

台湾に来てね、絶対だよ、みたいな約束をさせられてしまったので、次の旅行はアジアになりそうです。

スパコン、世界一になる必要あるのか

いま、民主党の事業仕分けが進んでいますが、その中でスーパーコンピュータも目をつけられたようです。「ノーベル賞の野依氏、蓮舫氏らの「スパコン、世界一になる必要あるのか」発言に憤慨」とあるのですが、いくつかポイントがあると思います。

まずは科学技術立国で生きていく覚悟があるのかという点で、おいらは以前から日本は科学技術立国として生きていく矜持を捨てたと思っています。スーパーコンピュータも産官学のうち、官学で熱くなっていて産で冷めているように見えます。だから、この流れは必然とも言えるし、逆に言えば最後の砦でもあります。

次に2位ではダメなのかということですが、おいらは2位でもよいと思います。半端な覚悟で2位取れるんだったらね。スーパーコンピュータはパフォーマンスを上げるために意欲的な技術をガシガシ放り込んでいき、これにお金がかかります。F1レースみたいなものです。2位でいいやとコストを削ったら、かなり下まで一気に崩落するでしょう。

あとは、よく指摘されることだけど、廃止・縮小前提の議論はよくないと思っています。大抵のことは「必要ないですよね?」って言われたら必要はないものです。必要とは、必ず要するものだから。ハーバードもケンブリッジも私立大学なのだから、国立大学なんか要らないよね?って言われたらそうかも知れません。大抵のものは事業仕分けにかけることで廃止できそうです。自衛隊民営化だってできちゃいそう(なわけないか)。

でも、一番要らないのは子供手当てのような気もします。将来の産業の発展を阻害しておいて、子供を育てやすい環境とか吹聴して人口を増やしてもニートになるだけではないかな。子供手当てとか高速道路の無償化も蓮舫さんに「必要ないですよね?」ってガシガシ追求してもらって、反論虚しく廃止にしてくれないかな。

お金をぐるぐる回して

子供手当てとか高校無償化の財源は税金と赤字国債です。どこまで減らせるかわかりませんが、過去最大の概算要求が出たので、相当の額の国債を発行することでしょう。確か日本の国債の97%は何らかの形で日本人が持っています。銀行が買っている場合もあるだろうし、亀井静香がご執心のゆうちょ銀行が買う場合もあるでしょう。もちろん、直接個人が保有している場合もあると思います。

ということは、国債を踏み倒しても損をするのは銀行や郵便局にお金を預けている日本人であって、実はそう問題にならないわけです。対外債務が山のようにあったら一大事だけど、ほとんどは国内の誰かが持っています。そういうわけで、今後も安心して国債を発行することができます。

さて、そうしてできたお金を子供手当て等のばらまきに充てるということは、国民から借りたお金を国民に分配しているということになります。お金がぐるぐる回っているだけ。摩擦0なら永遠に回る歯車みたいでいいけど、実際には歯車と同じでお金にも摩擦があります。公務員の給料だったり、国債のクーポンだったりです。仮に100借りて80を分配し20を誰かが吸い取るモデルとするとよいでしょう。いずれ歯車は止まります。止まらないようにするには外からペダルを漕いでやる必要があって、それは資源を持たない日本では産業、特に科学技術の役割になります。だから、科学技術への投資は止めてはいけないというのがおいらの考えです。

そもそも、国債発行してばらまくこと自体が破産コースまっしぐらだと思うのですけどね。税収からばらまくなら富の再分配とも言えるけど、国債はいつかは返さないといけないお金。返さないで済ます方法も実はあるというだけ。インフレを起こして「円」の価値を減らしてしまうとかね。けど、日本はインフレになりそうもないから、いつかは返さないといけません。

仕事には就きたいけど、円の価値を目減りさせない路線の日本で就職するということは、先人が作って、今もばらまかれ続ける借金の返済をするということでもあるのだなあ。そう考えると働いたら負けって言葉もわかる気がする。

追記:沈没した「スパコンの戦艦大和」

コメントに面白いのがあったので追記します。

沈没した「スパコンの戦艦大和」
http://news.livedoor.com/article/detail/4451685/

こうした意見もあるようですが,onaneetさんはどうお考えですか。

ええと、一見すると尤もなことを言っていると思いますが、そのうち3つは反対です。同意できるのは「調達に談合の疑いがある」だけで、これは投下コストの効率を損なうので何とかすべきだと思います。100投下したうち、70くらいしか開発に使われず、あとの30は不当な利益になっているとすれば、それをやめさせるべきです。

その他はなんて言うか理解がないというか文系の人ってこうなのかなという感じです。理学部は意味がないと言われているのに似ていると思います。どっかの熱血部活動じゃないのだけど「予定した性能が実現できるのか」というのは、おいらはそう大事だと思いません。成績のよくない子を塾に通わせるのは意味がないに近い話で、努力の重要性を忘れています。勉強をがんばったけれど志望校に入れなかった子供の学費は無駄なのかと言えば、そりゃあ残念だけど手に入れた学力はその後も長く生きるのです。基礎研究というのはそうした性質のあるものです。基礎研究への無理解はもう慣れっこですけど、またかって感じですね。「『日の丸技術』の開発には意味がない」も同じです。こういうものを金儲けの理屈で判断してはいけません。

最後に「スパコンは道具にすぎない」だけど「ムーアの法則で割り引くと4倍だ」と書いてありますが、ムーアの法則というのは半導体の集積率がどのくらいのペースで上がるかという経験則なのですが、池田信夫氏はそこんところを理解していないように思えます。

単純な話をします。パソコンのCPUは高速ですが、メモリはCPUに比べてかなり遅いのです。イメージとしては本棚から本を出したりしまったりして仕事をするのだけど、いちいち本棚まで行くのに時間がかかると思って下さい。そこでCPUにはキャッシュメモリというよく使う本を手元に置いておける仕組みがあります。キャッシュメモリは高速だけど高価です。だからパソコン用ではCPUの中にわずかな量だけ採用しています。もし、パソコンの全てのメモリがキャッシュメモリになったらどうかというと、高速化しますが、コストに見合ったほどは性能はあがりません。よく使うものというのは全体から見るとほんの一部だからです。

このようにスーパーコンピュータに投入される色々な意欲的な技術はちょっと癖の強いものです。コストの割には報われないとか、かなり特殊な用途でしか高速化しないとか、そんなんです。そこにムーアの法則というCPUの性能に直結する話を持ってくるのは、知ったかぶりなんじゃないかなと思います。法則名を出すとなんとなく説得力あるように見えますけどね。「大統一理論により世界中の国家は1つにまとまるであろう」みたいに言うと、理論を知らない人は「偉い学者がそう言っているのだから」と思うかも知れませんが、実はこの用法は誤りで、専門家が見たら失笑するようなものです。

今のパソコンとかゲーム機は昔のスーパーコンピュータより高速に計算ができると言われます。これは今のスポーツカーが昔のレーシングマシンより速く走れるのに似ています。おまけに荷物を積めてエアコンも効き、色々犠牲にして速度を追求した昔のレーシングマシンがアホみたいかと言えば、そんなことはないのです。当時の人は、当時可能だった最高の技術を使ってレーシングマシンを作り、その努力のうちいくらかが自動車の発展に寄与したようなことがコンピュータの世界でもあるのです。